おいべっさんにいらっしゃい!

旧東海道・伝馬町通りにある西宮神社。 ここでは毎年10月、2日間夜を通してお祭りが行われます。
誰でもふらりと立ち寄ることができるこのお祭り、一体何が行われているのでしょうか?

耐震対策で2月から瓦屋根を銅版に張り替えるという西宮神社。この姿は1月で見納め!

農漁・商売繁盛!

「おいべっさん」と聞いてピンとこない人も、「えびす様」といえばどうでしょう?そう、おいべっさんは、七福神の一員。七福神の中にはインドからやってきた大黒天、中国からやってきた布袋様などがいますが、唯一、日本古来の神様といえるのがおいべっさん。左手に鯛、右手に釣竿を持つ姿から想像できるよう、漁業に縁が深く、海の神様として信仰され、農業や商売繁盛の神様としても親しまれてきました。そんなおいべっさんを祀るのが、兵庫県西宮神社を本社とする、横田町(よこたまち)の西宮神社です。
毎年10月19日の朝8時から20日の正午まで、西宮神社で夜を通して行われるお祭りが「えびす講」。地元の人には「おいべっさん」の愛称で親しまれています。お話をうかがったのは横田町2区で、20年前から神社の役員をしている西宮神社責任総代の塚本操さん。「毎年、農漁・商売繁盛、家内安全を願いにたくさんの方が参拝され、参詣者は『ご縁起(ごえんぎ)』を買って帰るんですよ。翌年には1年のご利益に感謝し、より大きなご縁起に買い替えるというのが習わしです」とのこと。19日の13時から20日の深夜2時まで車両通行止めとなる伝馬町通り(西はつつじ通り、東はきよみずさん通りまで)には、ご縁起や飲食の露店が約70軒!家族連れで賑わうのが18時から20時頃。深夜近くになると、一杯飲んできた人や飲食店の店主などが営業を終えて訪れるそう。「昔はその時間になると、芸者遊びをした粋な旦那衆がやって来て、芸妓さんも一緒なもんだから、そりゃあ華やかでしたよ」と塚本さん。本来えびす講は20日に入ってからを指し、20日のお祭りを「本宮まつり」と呼ぶそう。それに対し、19日は前夜祭にあたる「宵宮まつり」。お祭りも終盤に近づいた20日の午前10時に行われるのが、年に一度の御開扉(ごかいひ)。神様を迎え入れるため、本殿の扉が開かれます。

丸一屋えんぎ店で作られているご縁起。昔ながらのスタイルに近いのがこちら。大きいものだと3m近いサイズもあったそう。

「ご縁起」とは?

ところで「ご縁起」とはなんでしょう。こちらに関しては、90年ほど前から西宮神社の目の前でご縁起を作り続けている丸一屋えんぎ店を訪ねました。店内に入ると、大小様々なご縁起がずらり!かつて地元でご縁起を制作・販売する店は、ここ丸一屋えんぎ店と、隣接して原田だるま店がありました。現在残っているのは丸一屋さんのみ。職人の高齢化・後継者不足が原因のようです。「ご縁起は、竹の棒に鯛や千両箱、大福帳、おかめ、サイコロなど、縁起物を吊るしてあるものです。よそでは熊手の形もあるけれど、静岡では昔から棒状のものだね」と二代目の石部欽一郎さん。今も細々と外部の内職さんと連携してご縁起を作り上げていますが、以前のように卸すほど数を作れないため、知っている人だけが店に買いに来てくれるそうです。
江戸時代から続くというえびす講ですが、今ほど賑やかになったのは昭和になってからとのこと。きらびやかなご縁起が並ぶ風景や人の波はエネルギーがいっぱい!お目当てのご縁起を買い求めたお客がいる露店からは、三本締めする威勢のいい声が響きわたり、こちらまでおめでたい気分にしてくれます。今年の10月は、横田町界隈で一杯楽しんだ後、おいべっさんへ足を運んでみませんか。

きよみずさんと、アコーディオンおじさん

「きよみずさん」の愛称で親しまれている清水山公園は、谷津山の西の端に位置します。この「きよみずさん」の「さん」ですが、敬称なのか「山」だから「さん」なのか、疑問に思ったことはありませんか?正解は、敬称の「さん」。そして、この清水という名前はご存じ京都の清水に由来しています。遡ること永禄2年(1559年)、今川氏輝の遺命によって寺を創建。その時、この土地が京都の清水の風景に似ていることから清水寺と名付けられました。公園はそのずっと後、明治42年に静岡市の公園第1号として開設。山の斜面を利用して造られた展望台はまさに清水の舞台!ある休日、山道を上っていくと、アコーディオンの優しい音色が聞こえてきました。音に誘われ足を運ぶと、頂上の広場に到着。そこでアコーディオンを奏でていたのは大畑緑郎(ろくろう)さん。「天気が良くて気が向くとここへ練習に来るんですよ。坂道が運動にもなるしね」と、ピカピカと輝く自慢のイタリア製アコーディオンを見せてくれました。そうそう、きよみずさんは土日祝の日中だけ前の道路に駐車できます。天気の良い日、アコーディオンの音色が聞こえたら頂上を目指してみてはいかがでしょうか。