由比の朝市奮闘記

由比の元気のもとの1つといえるのが、年2回開催されている朝市。
地元の商店を継ぐ4人が手探りではじめた朝市が、これほど人気を得た理由とは?

殺気立つ朝市!?

由比の桜えび卸問屋、原藤商店(P30参照)の十五代目 原藤晃(はら とうこう)さんからこんなことを聞いた。 「僕、仲間と一緒に朝市をやってるんですよ。『しずおか結市(むすびいち)』って名前で2月と6月の年2回。物販だけじゃなくライブもあって、この間はすごく盛り上がったんですよ!」 そう熱弁する原さんの活動が気になり、後日インターネットで検索してみると、一枚の写真に目が留まった。そこに写っていたのは、ものすごい勢いで商品を買い求める人の姿。最近は様々な地域でこうしたイベントが企画されているが、私にとってそれらはふんわり、ほっこりしたイメージ。それにくらべ結市は、少々殺気立ったような、朝市らしからぬ雰囲気が漂っていた。「遠慮してたら買いたいものにたどり着けないよ!」とでもいうように。それほど皆が夢中になる結市ってどんなものだろう?気になった私は再び原さんを訪れた。

左から、〝由比朝市の会 そこっと〟のメンバーの原藤晃さん、川崎光一朗さん、望月孝泰さん。

仲間のチカラ

現在、結市を主催するのは、由比で長年商売を続ける原藤商店の原さん、こめや食品㈱の川崎光一朗さん、まるいち青果の望月孝泰さんの3人。2009年、当時はそこに㈱カタヤマキの安部総一郎さんも加わり、4人で〝由比朝市の会 そこっと〟を結成した。「由比町が静岡市に合併したのが2008年。その後、昔を懐かしむ声を多く聞きました。それで徐々に『由比を賑やかにしたい!』という気持ちが強くなり、地元の仲間に声を掛けたのがはじまりです」と、当時を振り返る原さん。
1回目の朝市は2010年3月。まるいち青果の駐車場に〝そこっと〟のメンバー4人が集まった。メインの商品は旬を迎えたデコポン。テレビや新聞記事のおかげか、開始1時間前からお客が訪れるほどの盛況・好評ぶりだった。とはいえ、その後は紆余曲折あった。2回目はなぜか集客が激減したり、はたまたお客の勢いに負け開始時間前に販売してしまい、苦情が殺到したり。その後、〝静岡おみやプロジェクト〟(P65参照)の参加企業や、由比の企業を中心に出店者を増やし、生演奏などを取り入れた。「来客者の熱気がすごくて(笑)。音楽の力で少し穏やかな雰囲気にならないかと思い、友人に演奏をお願いしたんです」。原さんの狙いは見事的中。音楽が流れることで皆が気持ちよく朝市を楽しむことができるようになり、今もこの慣習は続いている。

最近では殺気立った雰囲気が消え、来場者は並んで購入するようになった(でも皆、目が真剣!)。

気持ちが繋ぐ朝市

喜ばしいことに回を重ねるごとに来場者が増えたことで、開催場所や駐車場は地元企業の協力を仰いだ。現在、旧由比町役場庁舎が会場となっているのは、2011年に市長と対談した成果。利益ではなく、地域を元気にしたいという、そこっとメンバーの気持ちが伝わったのだ。現在出店数は29、演奏者も増え、800~1000人が来場するほどの朝市となった。出店者や奏者を選ぶ基準は「自分だけ、というのではなく皆で協力して良くしていきたいという気持ちが大事。真面目に一生懸命商売をしている人にお願いしています」。同じモチベーションの人を集めると、おのずと商品も魅力的になってくる。「由比を元気にしたい」という当初の思いは由比に暮らす人に確実に浸透している。次回の開催は6月。朝市に立ち寄って、夏本番になる前の休日を楽しんでみてはいかがだろう。