藁科で見つけたおもしろマップ

安倍川の最も大きな支流である藁科川。それと並走する藁科街道は静岡市の奥深くへと伸び、街道周辺には豊かな自然が息づき、歴史が詰まっている。
そんな、藁科のことを知りたければ、まず「わらしなてくてくマップ」を手に入れることを勧めたい。藁科生涯学習センター主催の「てくてくマップ作成講座」の中で生まれたマップで、講座に参加した地元住民が実際に地域を巡って見つけた場所や名産品がふんだんに盛り込まれている。監修は、子育てのために県外より藁科に移住してきた今永さん。すっかり藁科に惚れこんでしまい、自身でも3年かけて原付で藁科をまわり、自作マップを作っているほど。最近ではこのてくてくマップをきっかけに、地元を見直す動きも活発になっているのだとか。今永さんは、「車で通りすぎがちの藁科街道周辺は、本当は歩くととても気持ちの良い場所。新しい発見をしにぜひマップ片手に散策に訪れてほしい」と話す。マップは全5シリーズ。藁科生涯学習センターで必ず手に入る。
ここからは、そんな「わらしなてくてくマップ」の監修者今永さんと、藁科生涯学習センタースタッフの相澤さんの話を基に、藁科の魅力のほんの一部を紹介しよう。

新間一色地区、
一色煙火保存会

大晦日の夜、羽鳥の竜津寺は除夜の鐘を撞きに訪れた人々で賑わい、0時を過ぎると打ち上げられる20発ほどの手筒花火で新年を迎える。燃えるような赤に眩しい白と色を変えながら勢いよく噴射する火の粉は圧巻!!それを手掛けるのは、18年前に新間一色地区の村おこしのために発足した一色煙火保存会のメンバーだ。毎年10月に同地区で開催される一色天満宮例大祭で手筒花火を上げ始めたのが活動の始まり。例大祭では大小100発も打ち上げる。一歩間違えたら大きな事故にもつながりかねない手筒花火は、全てが自己責任。竹を伐り出すところから打ち上げるところまで、他人の花火には一切手を出さないのだという。また、火薬は気候に左右されるほど繊細なため、打ち上げ当日に手筒に仕込むそうだ。華やかさの裏にはそんな緊張感も潜んでいると思うと、本番を見ずにはいられない。市内各地のイベントでの打ち上げも精力的に行っている。

幻の寺、
建穂寺(たきょうじ)

建穂には、600年代半ばに開基されたとされる、平安から江戸時代にかけて栄えた大寺院跡が眠る。観音堂が標高150mほどの山上に建てられ、ふもとの建穂神社と一体になった神仏混淆の真言宗の寺だったそうだ。敷地内には坊が立ち並び、各地から僧侶たちが集まり勉学に励んでいた。静岡市井宮生まれの大応国師も、幼くしてこの寺で学んだ1人との記録も残る。明治初年の廃仏毀釈や火災により建穂寺は廃寺となったが、観音堂が別の場所に再建され、その中に安置される災難を逃れた63体もの仏像は、今でも見ることができる。それらの史跡を守るのは建穂町内会の人々だ。劣化していく仏像たちは修復が必要なものが多く、クラウドファウンディングなどで寄付を募ったり、史跡を整備したりして、なんとか未来に歴史をつなげようと、奮闘の日々を送っている。